インタビュー

神谷町の松屋珈琲店で「日本の珈琲の父」から受け継いだコーヒーを

神谷町の松屋珈琲店で「日本の珈琲の父」から受け継いだコーヒーを

東京メトロ日比谷線の神谷町駅前から桜田通りを虎ノ門ヒルズ方面へ歩き、3つ目の角を右に曲がると見える、松屋珈琲店の赤い軒先テント。

空に届きそうなほど高いビルが立ち並ぶ界隈では、松屋珈琲店の3階建ての建物はかえって目立ちます。

松屋珈琲店は、店主の畔柳一夫(くろやなぎ・かずお)さんの祖父、松太郎(まつたろう)さんが1918年(大正7年)に創業した焙煎所兼卸会社。長きにわたり、喫茶店などへコーヒー豆を卸しています。

15年前からは店頭で、コーヒー豆とコーヒードリンクの販売も行っています。

この記事を書いた人

sk

S.K

編集部ライター

ここ数年、朝のソイラテから一日が始まります。
そして朝ドラを見ながらブラックを1杯、仕事中は1〜2杯。
夜になるとコーヒー豆乳焼酎を一献というのが日々のコーヒールーティンです。

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ブラジルから神戸に届いたコーヒー豆が、松屋珈琲店創業のきっかけに

松屋珈琲店

松屋珈琲店を創業する前は南米などへ向かう移民を募集、輸送する会社に勤めていたという店主・一夫さんの祖父・松太郎さん。

ときは20世紀初頭。ブラジルに渡った日本人移民の働きに敬意を表し、サンパウロ州政府から数年に渡り合計7,215袋(70kg入り)もの​​コーヒー豆が寄贈されていたといいます。。

初めてコーヒー豆が届いた1914年(大正3年)、神戸港まで引き取りに行ったのが松太郎さんでした。

コーヒーを飲む人はおろか、知っている人もわずかという時代。届いた大量のコーヒーをお金に替えるため、松太郎さんは奔走したといいます。

脱サラしてコーヒー豆を取り扱う会社を設立

松屋珈琲店

松太郎さんらはカフェ・パウリスタを立ち上げ、広く一般庶民にコーヒーを提供したことから、コーヒーはだんだん世の中に浸透し始めます。

都市部にコーヒーを飲むための喫茶店も現れはじめた1918年(大正7年)、松太郎さんはサラリーマンを辞めてコーヒー豆を取り扱う「松屋珈琲店」を設立しました。

輸入したコーヒー生豆を焙煎し、レストランや喫茶店へ卸す松屋珈琲店は創業から100年あまり経った今も変わらず、同じ場所で営業しています。

戦時下では焙煎機から配達用の自転車までもが軍へ

松屋珈琲店

大戦景気に沸く大正時代の半ばに創業した松屋珈琲店。創業から昭和の初めごろまで、順調にお店を大きくしたといいます。

しかし太平洋戦争が始まり、コーヒーのような嗜好品は仕入れも販売もしにくくなります。

同時に、戦時下の金属類回収令により鉄製品などは多くが軍へ。

松屋珈琲店でも焙煎機はもちろんのこと、あらゆる金物を持ち去られてしまったそうです。

「配達のために自転車に乗っていた従業員が軍人から銃を向けられて、自転車を奪われたっていう話を祖父から聞いたことがあります」と一夫さん。

焼け残った松屋珈琲店、フィリピンから戻らなかった松太郎さんの長男

太平洋戦争で東京は焼け野原になりましたが、松屋珈琲店の建物は焼け残りました。

しかし、後継者と目されていた松太郎さんの長男(2代目店主の兄)は、戦地から戻らなかったといいます。

そのため松屋珈琲店は次男・潤さんが引き継ぐことに。潤さんと松太郎さんの二人三脚で、戦後の松屋珈琲店は再スタートしました。

敗戦から30年後の1975(昭和50)年、松太郎さんはコーヒー文化への尽力が認められ、勲五等瑞宝章を受章。2年後、85歳でこの世を去ったそうです。

コーヒー農園へスタッフを派遣していて手が足りないと言われ、店を手伝いに

松屋珈琲店 現店主の一夫さん

現店主の一夫さんは、叔父であり2代目店主の潤さんから「手が足りないから来て」と言われ、アルバイト的にお店を手伝っていたら後継ぎになっていたそうです。

20代の中盤くらいに一度、お店を辞めようと思ったことも。

そのころのある日、全く同じコーヒー豆を何年も卸していたお店から「いつものと違わないか?」と聞かれたことをきっかけに、豆の流通経路や栽培地の気候などについて調べるように。

同時期に受けたコーヒーの講習で「松屋珈琲店の豆はおいしいけど量販できない」という講師の意見に「そこがうちの良さ。大手に出せない魅力」と言い切る2代目の意見に納得。

コーヒーの奥深さに感銘し、松屋珈琲店を守り続ける決意をしたそうです。その後はコーヒーへの造詣を深めます。

同じコーヒーでも気温やその時の体調、食べたものによって感じ方が変わるから

「今日は昨日と少し味わいが違うように思うけど、うん、いける!うまい!」というコーヒーが、松屋珈琲店のコーヒーです。

コーヒーは焙煎からの経過時間や気候、湿度などによって味や香りは変わります。飲む側の体調などによってもまた、感じ方には変化があるでしょう。

それでも松屋珈琲店のコーヒーは「いつもきちんと、おいしく味わえる」コーヒーです。

コーヒー豆の焙煎と卸に加えて小売、ドリンク販売を開始

松屋珈琲店

手作りの焙煎機で少しずつローストするという、松屋珈琲店のコーヒー。祖父母の代から飲み続けているという常連客も珍しくないそう。かつて、喫茶店やレストランをしていた人たちが自宅で飲むために、引退後も注文し続けてくれることもあるのだとか。

「なんだかんだいってお客さんが途切れないんですよね、うちは」と。

コーヒー豆の焙煎と卸を長らく続けてきた松屋珈琲店は3代目・一夫さんの発案により、15年ほど前から小売とコーヒードリンクの販売を始めました。

2023年現在、小売とコーヒードリンクの売り上げは卸に追いつこうとしているそうです。

100年余りの歴史と経験が築き上げた、松屋珈琲店のコーヒー豆

松屋珈琲店

1階の店奥に、焙煎所を併設している松屋珈琲店。

お店のドアを開けると、煎りたての豆の香りに包まれます。コーヒー好きはすぐに、ヒーリング効果を感じるでしょう。

お店ではコーヒー豆が買えるほか、テイクアウトのコーヒーも数種類用意しています。

椅子が4脚あるので、座ってコーヒーを飲むこともできますよ。

リーズナブルに楽しめる老舗のブレンド

出典:https://www.la-vie-en-cafe.com/

松屋珈琲店のブレンドは9種類。

100gで税込550円からとお求めやすく、懐かしさを感じる深煎りを中心に、飲みやすく飽きのこない中煎りを揃えたラインナップです。

ホームページには、それぞれの豆の様子がよくわかる写真を掲載しています。

色もオイルの出ぐあいもさまざま。目で見て、その違いを感じてください。

>>松屋珈琲店のブレンドについて詳しくはコチラ

シングルオリジンもお求めやすく

出典:https://www.la-vie-en-cafe.com/

ブレンド同様、松屋珈琲店ではシングルオリジンも値ごろに楽しめる豆が中心です。

種類を豊富に取り揃えていますが、売り切れてしまうこともしばしば。

お店で、ウェブで、好みのものを見つけたら即入手が安心かも。

新しいイチオシ。コロンビア・ウィラのピンクブルボン

出典:https://www.la-vie-en-cafe.com/

「最近、おいしいと思った豆なんだよね」と、一夫さんがすすめてくれたのはコロンビア・ウィラのピンクブルボンです。

さくらんぼのような実がかわいらしいこのピンクブルボンは、やさしい甘みとやわらかな酸味、華やかな香りを備えた豊かな風味が特徴。

淹れたときの美しい琥珀色も楽しみたい逸品です。

お店で、コーヒーを飲みながら豆選びを

松屋珈琲店

2023年4月現在、松屋珈琲店の店内には4つ、椅子が置かれています。ここが空いていれば座ってゆっくり、テイクアウト用のコーヒーが飲めます。

コーヒーを楽しみつつ、買って帰る豆をあれこれと選ぶのも楽しいひととき。

お店のスタッフに相談しながら、お好みのコーヒー豆を選んでみてください。

2023年中に店内を改装予定

松屋珈琲店

コーヒーが飲める店内スペースを広くするために、松屋珈琲店では2023年中に店内を改装する予定があるそうです。

できれば秋(9月)​​の完成を目指したいとのこと。

夏以降に訪ねるときはもしかしたら、椅子が多く置かれているかもしれませんね。

オンラインショップも充実

出典:https://www.la-vie-en-cafe.com/

神谷町のお店へ行くのは難しいという方は、松屋珈琲店のオンラインショップを覗いてみてください。

現在、取り扱いのあるコーヒー豆についてはくわしい解説と、豆の様子がよくわかる写真(焙煎後、粉砕後、抽出後)が掲載されておりお好みが選びやすいですよ。

ドリップバッグやギフトセット、コーヒー器具なども取り揃えています。

>>松屋珈琲店オンラインショップはこちら

松屋珈琲店の詳細情報

店舗名松屋珈琲店
住所東京都港区虎ノ門3-8-16
電話番号03-3431-1380
営業時間8:30~17:30
定休日土・日・祝祭日
駐車場なし
Official Sitehttp://www.la-vie-en-cafe.co.jp/
公式SNSFacebook

※本記事は2023年4月時点の情報です。掲載情報は現状と異なる場合がありますので、事前にご確認ください。

※新型コロナウイルスをはじめとした感染症などの拡大防止のため、掲載情報に変更が生じることがあります。最新の情報は直接、お店へお問い合わせください。

※お店を訪問される際はマスク着用と手洗い、手指の消毒などを心がけ、感染拡大防止にご配慮いただきますようお願いします。

※記事内には撮影のため、お店の方にマスクを取っていただいているものがあります。

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S.K

編集部ライター

家で飲むコーヒーは基本ノンカフェインの決まった銘柄ですが、加入している生協に知らないコーヒーが出ていれば買うことも。
喫茶店やレストランでは、ガツンとカフェインの効いたのが嬉しいです。
出張や旅行などで遠方に行くと水が違うからか、何気なく立ち寄った店で飲んだコーヒーが思い出に残ることも少なくありません。

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