コーヒーには味の決め手となるポイントがあります。それは香り・酸味・コク・苦味の4つです。
そのなかのひとつである酸味には、良い酸味と悪い酸味が存在し、コーヒーの味を大きく左右させます。
今回は酸味の質の違いや、悪い酸味が出る要因について解説していきます。
後半では酸味が苦手な人でも飲みやすくする方法や、おすすめの酸味の強い豆と弱い豆も紹介していきますね。
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バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。
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もくじ
コーヒーの酸味とは果物が持つ酸味成分
コーヒー豆とは、コーヒーチェリーと呼ばれる果実の中にある種子を取り出したものを指します。
果肉を残して乾燥させた、ナチュラル精製やパルプドナチュラル精製を施したコーヒーほど、その風味を強く味わうことができます。
つまり本来のコーヒーは果実の風味がそのままコーヒー豆に移ったような、フレッシュな酸味を持っているということです。
またコーヒー豆が持つ個性によって、酸味の質や強さなどの感じ方も変化します。
コーヒーの良い酸味と悪い酸味の違いとは?
コーヒー豆には良い酸味と悪い酸味があるので、ただ酸味があると一言でまとめるわけにはいきません。
良い酸味と悪い酸味の違いについて、それぞれ説明していきます。
コーヒー豆本来の"美味しい酸味"と"酸化した酸味"は別物
コーヒーを飲むことで感じられる酸味には、良い悪いというよりも美味しいかどうか、という表現が適しているでしょう。
例えば美味しい酸味は「豆自体が持っている酸味」であり、コーヒー豆によって決まる酸味だともいえます。
美味しくない酸味は主に酸化したもので「発酵した酸味、渋みを伴う酸味」といったもの。
抽出時に加熱することにより酸素と結びつくことで酸化した味になることもあります。
酸化(劣化)した酸味もコーヒーの良さ
酸化することにより感じられる酸味。これも人によっては、悪い酸味=美味しくない酸味だと思うこともあるでしょう。
ですが、コーヒー抽出は一般的に熱を加えて(お湯で)抽出します。つまりどんなコーヒーでも、ある程度は酸化してしまっているといえます。
しかし加熱して抽出されたコーヒー全てが美味しくないのか?といえばそうではありません。
どんなに良質なコーヒー豆であっても、一定の酸化はある。その上で楽しめる酸味が、コーヒーの醍醐味だともいえますよね。
コーヒーには正解がないからこそ、豆本来の酸味と酸化した酸味は混同させず、かつ酸化した酸味も美味しさのひとつだと捉えて楽しみたいものです。
果物のような爽やかさが美味しい酸味
豆本来の酸味は美味しい酸味であるといえ、例えるならば果実のような酸味を感じることができます。
果実のような酸味は爽やかでみずみずしく、鼻に来るようなツーンとした酸っぱさがありません。
またコーヒーの味を評価する人達は、レモンやグレープフルーツ、アップルなど、そのままフルーツに例えて良い酸味の細かな特徴を表現します。
このような酸味を味わうことのできるコーヒー豆は、新鮮だという証拠でもあります。
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品質の劣化など、酸化した酸味は美味しく感じられない
対して美味しくない酸味とは、コーヒー豆が劣化したことによって現れる、酸っぱい酸味であることが多いです。
ヨーグルトなどの発酵したような酸っぱさや、舌に刺さるような刺激的な酸味が特徴。
コーヒーの酸味が苦手だという人は、この悪い酸味をイメージしている人が多い印象です。
元々コーヒーが持っているのは良い酸味の方なのですが、「栽培環境、焙煎度合い、保存方法」などによってコーヒー豆が劣化すると、このような悪い酸味が出てきてしまいます。
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コーヒーの嫌な酸味を強く感じさせる3つの要因
コーヒーの嫌な酸味を強く感じさせる主な要因は3つあります。
それぞれの要因について詳しく解説していきます。
コーヒー豆の酸化
コーヒー豆は焙煎によって熱を加えているので、酸化しやすくなっています。
つまり浅煎りのコーヒー豆より、長く焙煎した深煎りのコーヒー豆の方が酸化しやすいということです。
コーヒー豆が酸素に触れている限り、焙煎後はどうしても、少しずつ酸化していきます。
なるべく空気に触れないよう密閉容器に入れたり、すぐに飲まない場合は冷凍するなどして、保存するのもよいでしょう。
また粉にしてしまうと、空気に触れる面積が増えて酸化スピードが早くなるので、飲む直前に豆を挽くことをおすすめします。
欠点豆の混入
欠点豆とは不適切な栽培や収穫、悪質な保存環境などが原因で欠点が生じてしまったコーヒー豆のことを指します。
発酵豆やカビ豆は、焙煎前の保存状態が悪かったためにコーヒー豆にカビが生えたり、劣化したりする症状です。
形が欠けていたり、虫食い豆があると焙煎時に煎りムラが起こりやすくなります。
これらの欠点豆によって嫌な酸っぱさが出てきてしまうのです。
お店によってはハンドピックと呼ばれる、欠点豆を一つひとつ手作業で取り除く作業を行っているところもあります。
これを行うことにより、欠点豆によってコーヒーの味が悪くなるのを防げます。
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コーヒーの温度低下
時間が経ったコーヒーを飲んだ時、入れたてのコーヒーより酸っぱく感じたことはありませんか?
これは温度の低下もコーヒーの酸味と関係しているからです。
コーヒーの抽出温度が低いと苦味成分が生成されにくく、苦味や甘味を感じるのが難しくなります。
そして酸味の主要成分であるキナ酸は、コーヒーの温度低下と共にキナ酸の構造にも変化が起き、より強く酸味を感じやすくなります。
また、コーヒーの酸化は豆より粉、粉より液体の方が酸化するスピードは早いため、液体の状態で温度が低下すると早いスピードで酸化が進んでしまいます。
コーヒーの美味しい酸味を味わう方法
焙煎度合いの調節
コーヒーの苦味や酸味は、焙煎によって引き起こされる化学変化と大きく関係しています。
果実をイメージさせるリンゴ酸やクエン酸は、焙煎時の水分蒸発で増加します。
このタイミングまで焙煎したものが浅煎りにあたります。
その後加熱し続けると、熱分解してリンゴ酸やクエン酸は減少していき、逆に苦味成分が徐々に増加します。
そのためクリアで果物のような酸味を味わいたい場合は浅煎りのコーヒー豆を、苦味やコクによる重厚感を味わいたい場合は深煎りのコーヒー豆が適しています。
自分のその時の気分や好みに合った焙煎度のコーヒー豆を選ぶことが大切です。
[関連]【専門家監修】コーヒー豆の焙煎度合い(ロースト)は何段階ある?味と特徴を解説
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コーヒー豆の保管を適切に行う
コーヒー豆の保管に気を使っている人は少ないかもしれません。
ですがコーヒー豆はとてもデリケートで、酸素・紫外線・高温・多湿に十分注意しないと酸化が進み、嫌な酸味のあるコーヒーになってしまいます。
コーヒー豆を購入して一週間以内など、比較的すぐに使い切る場合は涼しくて日の当たらない冷蔵庫での保管がおすすめです。
すぐに飲まない場合は冷凍保存すると長持ちしますよ。
またコーヒー豆は他の臭いを吸収しやすい性質を持っています。
冷蔵庫や冷凍庫の他の食材の臭いを吸収する恐れがあるので、密封袋(アルミバッグ)や密封容器(キャニスター)に入れて保存しましょう。
[関連]【専門家監修】コーヒー豆・粉の保存方法とは?知っておくべきポイントを徹底解説
豆の挽き方を変えることで苦みや酸味が変化する
コーヒー豆の挽き方を変えることで、苦味や酸味をコントロールすることができます。
まずコーヒー粉がお湯に触れた時、苦味成分よりも酸味成分の方が先に抽出されます。
そのためコーヒー豆を粗く挽くほどお湯の通りが早くなり、苦味成分が抽出しきれず酸味が際立ったコーヒーが出来上がります。
細かく挽けばお湯に触れる面積が多くなり、さらに目が詰まっているのでお湯が下に落ちるのに時間がかかります。
お湯に粉が長く浸る状態になるので、苦味が強調されたコーヒーが出来上がりますよ。
[関連]【専門家監修】コーヒーの苦味とは?苦くなる原因やおすすめのコーヒー豆
軟水で淹れたコーヒーの方が酸味を感じやすい
コーヒーを入れる際に使用する水の硬度でも、苦味や酸味を調節できるのをご存知でしょうか?
水はカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量で硬水や軟水に分類されます。
硬水はクロロゲン酸やカフェイン、タンニンなどの成分が抽出されやすく、苦味を強める傾向があります。
反対に軟水では、その成分が程よく抽出されるので、まろやかで酸味も引き立った味に仕上がりやすいです。
よりコーヒーの味にこだわるのであれば、水の硬度も気にして淹れるといいでしょう。
苦味やミネラルの味を楽しみたい人は硬水を。まろやかさや酸味を味わいたい人は軟水を選んでドリップするのがおすすめです。
[関連]【専門家監修】ハンドドリップの基本的な淹れ方や美味しく淹れるコツを解説!
注ぐお湯の温度で味が変化する
コーヒーに注ぐお湯の温度が高すぎると苦味が出やすく、温度が低いと酸味がでやすい傾向にあります。
そのため苦味を抑えたいなら90℃のお湯で注ぐことをおすすめします。
温度が低すぎるとぬるいコーヒーが出来上がってしまうので、最低でも85℃程度までにすると良いでしょう。
またお湯を一気に注ぐと苦味成分が溶けだす前にお湯が落ちてしまい、酸味成分だけが溶けだして酸味が強くなり過ぎることもあります。
ゆっくり注いで、コーヒーの成分を十分に引き出すことがポイントです。
塩を入れることで強すぎる酸味や苦みがまろやかに
エチオピアや一部の地域では、コーヒーの酸味や苦味を抑える方法として、コーヒーに塩を入れて飲むスタイルが一般的に知られています。
これは元の味とは異なる味を混ぜた時に片方、もしくは両方の味が弱くなる抑制効果という原理を利用したものです。
コーヒーにひとつまみの塩を入れることで、酸味や苦味が打ち消され、角が無くなりまろやかになります。
塩はほんの少ししか入れないので、しょっぱさを感じることもありません。普段私達がコーヒーに甘味の砂糖を入れているのも、抑制効果の働きを利用しているためです。
酸味が強いコーヒー豆の産地
タンザニアで生産される「キリマンジャロ」
キリマンジャロは、タンザニアのキリマンジャロ山域で生産されたコーヒー豆のことです。
元々酸味が強いコーヒーなので、浅煎りの豆はスッキリした酸味が強く出てきますが、深煎りの豆でも酸味が打ち消されず豊かなコクが生まれ、立体感が出てきます。
キレがあり雑味のないスッキリした味わいのキリマンジャロは、浅煎りも深煎りもどちらも非常に飲みやすいのでおすすめです。
[関連]【専門家監修】キリマンジャロコーヒーの特徴や美味しい淹れ方、等級や歴史
エチオピアで生産される「モカ」
エチオピア産のモカは、世界で最も古いコーヒー豆のブランドと言われているほど長い歴史を持っています。
フルーツのような爽やかな酸味と甘味が印象的で、柔らかなコクや苦味を微かに感じることができます。
フルーツを使ったケーキやジャムトーストとは、酸味が似ているのでよく合います。
またエチオピア産ならではの華やかで独特な強い香りも有名です。
[関連]【専門家監修】モカコーヒーの特徴や美味しい淹れ方、イエメン産とエチオピア産の違いと等級や歴史
ハワイで生産される「コナ・コーヒー」
コナ・コーヒーは、ブルーマウンテンやキリマンジャロと並ぶ世界3大コーヒーのひとつで、ハワイで生産される希少性の高いコーヒー豆です。
特徴として、苦味は少ないですがコク深く、芳醇な甘味と酸味が前面に出た風味はまさに完熟のフルーツをイメージさせます。
苦味は少ないけど、飲みごたえのあるコーヒーが飲みたいという時にはぴったりです。
日本では、他の豆とブレンドされたものが主流に出回っています。
[関連]【専門家監修】コナコーヒーの特徴や美味しい淹れ方、ハワイ産の人気度や等級と歴史
酸味が弱いコーヒー豆の産地
インドネシアで生産される「マンデリン」
重厚感あふれる苦味とコクが特徴的なインドネシア産のマンデリンは、ハーブやシナモンのような香りを漂わせます。
深煎りにすると酸味が消えやすいので酸味が苦手な人や、苦味をしっかり味わいたい人にはおすすめです。
えぐみが少なく、安定感があるのでブレンドコーヒーのベースとしても好まれるコーヒー豆です。
また酸味が少ないマンデリンは甘いケーキはもちろん、和菓子とも相性抜群です。
[関連]【専門家監修】マンデリンコーヒーの特徴や味わいと等級や歴史、美味しい淹れ方・飲み方を解説!
まとめ
今回はコーヒーの酸味について解説しましたが、コーヒー本来の酸味は、想像していた酸味とは違ったという人も多いのではないでしょうか。
良い酸味は酸っぱくなく、甘味を含んだ果実のような酸味です。
最近では質の良いコーヒーが日本でも増えてきているので、良い酸味と悪い酸味の違いは分かりやすくなっています。
また自分でも悪い酸味を最小限に抑えることは可能です。
次にコーヒー豆を買うときは、ぜひ酸味にも注目してみてください。
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この記事を監修した人
DONABE-COFFEE 店主
独自の「土鍋焙煎」を確立すべく、2013年10月に沖縄県名護市にコーヒー豆屋をOPEN。自家農園でのコーヒー栽培にも着手し、少量ながら毎年収穫に成功している。2021年「COFFEE SYMPHONY~コーヒーの自給自足を目指す人へ~」(つむぎ書房)を出版。
この記事を書いた人
小野 青
バリスタ/コーヒーマイスター/フリーライター
学生時代コーヒーの魅力に魅せられ、短期大学卒業後はフリーターでバリスタをしながらコーヒーを勉強しています。コーヒーマイスターの資格を取得し、現在はコーヒーの知識や経験を活かすためにライターとしても活動しています。大事にしているのは、正当な取引がされたコーヒーを選んで生産者の支援に繋げることです。