世界の約3分の1にあたる約60ヶ国で栽培されているコーヒー豆。その日の気分でさまざまな産地のコーヒーを味わえるのは嬉しいですよね。
これらのコーヒー生産国には共通するものがある、ということをご存じでしょうか?
「良質なコーヒー豆を栽培する地域に共通すること」と考えれば、ヒントになるかもしれませんね。
答えは「コーヒーベルト」です。コーヒーベルトは、質の良いコーヒーノキを育てるための好条件が揃ったエリアのこと。
今回はそんなコーヒーベルトの特徴や地域と、コーヒーベルトに属する生産国についてご紹介します。
この記事を監修した人
SCAJ認定コーヒーマイスター/SFCA認定コーヒーソムリエ/JCQA認定コーヒーインストラクター3級/日本創芸学院認定コーヒーコーディネーター
はじめまして、バリスタの岡田です。現在は、カフェでバリスタをしながら、自分のブランド「DREAMERS COFFEE」を運営し、イベントへ出店したり、オーダーメイドのブレンド豆をEC販売したりしています。
この記事を書いた人
フリーライター
かつてウィーンで本場のカフェ文化に触れ、その後北部タイで薫り高いコーヒーを味わって以来、コーヒーに心魅かれる。その想いが募り、美味しいコーヒーを追求して2年間の東南アジア・東アジア放浪の旅へ。
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もくじ
コーヒーベルトとはコーヒー栽培に適した地帯のこと
地球上でコーヒー栽培に理想的な地域は特定されています。
その中心地は赤道直下の熱帯地域。この赤道を挟んだ北緯25度線と南緯25度線の間が、コーヒー栽培に理想的な地域であり、「コーヒーベルト」と呼ばれる地帯です。
コーヒーベルト地帯は、細い帯状になって地球を横断。
この様子がベルトのような形をしていることから、「コーヒーベルト」と名付けられるようになりました。
数多くの良質なコーヒー豆を産出する国々は、このコーヒーベルトに位置しているのです。
日本でコーヒーベルト地帯に属する地域は「東京」と「沖縄」
赤道を挟んだ北緯25度線から南緯25度線のエリアであれば、日本もその一帯に位置しているのではないかと思いますよね。
そのとおりで日本の緯度はおよそ北緯20度から46度。南北25度の間に位置するエリアが存在します。
沖縄の石垣島と宮古島が北緯24~25度、東京の小笠原諸島が北緯20度~27度なので、これらの地域はコーヒーベルト地帯の中に入っているのです。
日本に大規模なコーヒー栽培が根付かない4つの理由
コーヒーベルト地帯に位置する地域があるものの、なぜ日本は世界中の生産国のように大規模なコーヒー産地に名を連ねていないのでしょうか?
実はコーヒーベルトに属しているからと言って、一大コーヒー産業に発展するとは限らないのです。
それにはコーヒー栽培をするにあたり、いくつもの適性が関わってきます。
日本でコーヒー栽培が盛んに行われない理由は4つ挙げられます。
1. 季節
日本には一年を通して春・夏・秋・冬と移り行く四季があります。
日本の風光明媚を作り出す大事な四季ですが、コーヒー産地としては適していないのです。
むしろ、乾季と雨季がはっきり分かれている環境が適地とされています。
2. 台風
日本には1年に数回台風が来襲します。この気象災害はコーヒー栽培のみならず、あらゆる農作物にダメージをもたらします。
3. 昼夜の寒暖差が激しい
コーヒーベルトに属する日本の地域には高い山がなく低地であるため、季節によって寒暖差がなく良質なコーヒー豆が栽培できません。
4. 冷害
日本では安定した気温を保つのが難しく、日照時間が短かったり、低温が続いたりすることがあります。
このような冷害で被害を受けるケースも少なくありません。
このように、日本ではコーヒーノキを育てるのに適した環境を得ることが難しいことから、コーヒー栽培が定着しなかったのです。
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コーヒーベルトでコーヒー栽培するのに必要な条件
コーヒーノキはとてもデリケート。大切に育てなければ生育に悪影響が出てしまいます。
それには栽培環境がとても大事で、条件が整うことで上質なコーヒー豆が出来上がります。
難易度の高いコーヒー栽培ですが、コーヒーベルトには優良なコーヒー産地が集まっています。
それは偶然が成し得たものではなく、しっかりとした理由があるのです。
豊富な降雨量
良質なコーヒーは、豊富な降雨量の中で育てられます。年間降水量1,500〜2,000mm程度が平均的に必要とされています。
というのも、コーヒーノキの成長期には十分な水分を与えなければなりません。
そのため、雨の多い雨季とコーヒー豆の収穫期に適切な乾季のある環境が最適です。
ただし降雨量は、雨季と乾季で多すぎても少なすぎても良いというわけではありません。
品種によっても必要とされる降水量が異なり、アラビカ種では年間降水量が1,400~2,000mm、カネフォラ種(ロブスタ種)は2,000~2,500mm程度が生育に必要な量になります。
[関連]アラビカ種のコーヒー豆の特徴と品種について解説します。
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適度な日当たり
良質なコーヒー豆を生産するためには、十分な日照量と適度な日陰を作ることが必要です。コーヒー栽培には日照量が多い方が好ましいです。
それでも長い時間直射日光にさらされると、紫外線の影響でコーヒー豆に栄養が行き届きません。
コーヒーノキはどんどんストレスとダメージを受けてしまいます。その結果収穫量が減少してしまうのです。
コーヒーノキにとってほどよい一定の日照量が適切ということになりますね。
日照量が多すぎる地域では、シェードツリーを活用した栽培方法を採用しています。
シェードツリーはコーヒーノキの周りに植えられた日陰用の樹木のこと。シェードツリーが適度な日陰を作り、コーヒーノキを守ってくれます。
[関連]【専門家監修】コーヒーの木の育て方と三大原種のアラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種
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年間平均20℃の気温
コーヒーノキは寒さに弱いのが特徴です。低温の環境ではコーヒーノキが枯れやすくなり成長に影響します。
だからといって暑いのが好きということでもなく、年間の平均気温20℃が適温。寒くもなく暑くもないレベルですね。
良質なコーヒー豆を作るには、安定した気温がとても大切な条件になるのです。
肥沃で水はけが良く少し酸性の土壌
コーヒーノキの生育状況は、土壌にも影響を受けます。
生育状況に適しているのは、有機物やミネラルなどの栄養を豊富に含んでいる土壌です。
その他にも、根腐れしないために水はけの良いことも好ましい条件と言われています。
特に、弱酸性で有機物を多く含む火山灰土壌が良いと言われています。
500m~2,500mの寒暖差のある高地
良質なコーヒーを栽培するためには、年間の平均気温が20℃前後であるだけでなく、標高の高さも必要と言われています。
標高は500m~2,500mくらいが適切で、昼夜で寒暖差があるとコーヒーノキに少しだけストレスがかかり優れたフレーバーが生まれます。
ただし霜には非常に弱いため、赤道から離れれば離れるほど栽培可能な標高は低くなります。
コーヒーベルトに属する主要なコーヒー生産国
コーヒーベルトには、ブラジル、タンザニア、インドネシアなど有名なコーヒー生産国が数多く分布しています。
それぞれに特徴を持つコーヒー豆が栽培されていますが、その中でも特に注目したい5つの生産国についてご紹介しましょう。
コーヒーベルトに国土の大半が属しているブラジル
ブラジルのコーヒー生産量は世界ダントツ1位。60か国以上とも言われているコーヒー生産国がある中、全世界のコーヒー生産量の約30パーセントを占めています。
ブラジルのコーヒー生産量がダントツで1位の理由は、広大な土地の大半がコーヒーベルトの範囲に入っているからです。
そしてそのエリアはいずれも、コーヒーを育てるのに適した5つの条件(降雨量・日当たり・気温・土壌・高地)に合致しているのです。
日本へのコーヒー生豆輸入量で首位のベトナム
コーヒー豆の輸出量がブラジルに次ぎ第2位のベトナム。カネフォラ種(ロブスタ)では、世界最大の生産国となりました。
日本に輸入されるベトナムのコーヒー豆は、ほとんどがカネフォラ種(ロブスタ)であり、主にインスタントコーヒーや缶コーヒーに使用されています。
品質改良や価格の安定性により、2020年1~7月には日本へのコーヒー生豆輸入量が首位となっています。
[関連]【専門家監修】ベトナムコーヒーの特徴や美味しい淹れ方、カフェ・フィンの使用方法も解説!
栽培地によって色々な香りや味のコーヒーを生産しているインドネシア
生産量がブラジル、ベトナムに次ぐ第3位のコーヒー大国インドネシア。
暖かい気候で水はけの良い火山灰の土壌を有しており、コーヒーだけでなく農作物の栽培に適している農業国です。
インドネシアは複数の栽培地で異なる銘柄のコーヒーを栽培しており、マンデリンやトラジャ、バリアラビカなどがあります。
中でもマンデリンは人気が高く、濃厚なコクと強い苦味、ハーブのような香りが特徴です。
日本でも人気の高い「エメラルドマウンテン」の栽培をしているコロンビア
生産量がインドネシアに次ぐ第4位のコロンビア。
コロンビアには高度な標高や栄養素の豊富な土壌など、良質なコーヒー栽培に適した環境がそろっています。
そんなコロンビア産のコーヒーで人気のある銘柄が「エメラルドマウンテン」です。
コロンビアで栽培されたコーヒーの中でも、厳選された3%未満の高級豆だけがエメラルドマウンテンとして認定されます。
[関連]【専門家監修】エメラルドマウンテンコーヒーの特徴や等級と歴史、コロンビア産コーヒーの人気度
世界最古のコーヒーである「モカ」が有名なエチオピア
エチオピアはコーヒー発祥の地と言われている国で、生産量がコロンビアに次ぐ第5位の生産国です。
エチオピアコーヒーの中でも有名な「モカ」は、世界最古のコーヒー豆ブランドとしても知られています。
モカコーヒーの人気は今なお衰えず、アフリカではトップクラスの生産量を誇るようになっています。
高品質で希少性が高い「コナコーヒー」の生産をしているハワイ(アメリカ合衆国)
アメリカのハワイ島コナ地区で生産されているのが、産地の名前が由来となっているコナコーヒー。
品質が高く日本でも人気のある銘柄のため、知っている方も多いのではないでしょうか。
ハワイ島はコーヒーベルトに該当しており、コーヒー豆の栽培に適切な条件が揃っています。
優れた栽培環境により高品質のコーヒー豆を産出しているだけでなく、労働コストや生産量が少ないため高価で希少性のある銘柄となっています。
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コーヒーベルトに含まれる日本の領土は沖縄だけ
コーヒーベルトに属している主な国は熱帯・亜熱帯地域であり、標高の高い土地を持っています。
日本にもコーヒーベルト内の北緯24度に沖縄の石垣島や宮古島があります。
しかし、高い標高や雨季・乾季などのコーヒー栽培に適した環境が整っていません。
実際にコーヒー栽培はできても、良質なコーヒー豆を大規模に栽培するのは難しいでしょう。
コーヒーベルトは世界中のコーヒー愛好家になくてはならない場所
コーヒーベルトは、コーヒー栽培に最良の場所。それでもデリケートなコーヒーノキを育てるためには、厳しい条件が整わなければなりません。
5つの条件が揃ってはじめて、世界中のコーヒー愛好家が夢中になるほどの良質なコーヒーが生み出されるのですね。
コーヒーベルトではさまざまな特徴のコーヒーが産出されます。
今回その中からご紹介した4つの生産国のコーヒーで、素敵なコーヒータイムを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修した人
SCAJ認定コーヒーマイスター/SFCA認定コーヒーソムリエ/JCQA認定コーヒーインストラクター3級/日本創芸学院認定コーヒーコーディネーター
コーヒーに目覚めたのは、大学3年の夏、アメリカのポートランドで飲んだ1杯がきっかけ。
はじめは、趣味でコーヒーを楽しんでいましたが、ワークショップでハンドドリップやラテアートなどを学ぶうちに、コーヒーへの熱が高まり、いまに至ります。
この記事を書いた人
フリーライター
かつてウィーンで本場のカフェ文化に触れ、その後北部タイで薫り高いコーヒーを味わって以来、コーヒーに心魅かれる。その想いが募り、美味しいコーヒーを追求して2年間の東南アジア・東アジア放浪の旅へ。各国カフェタイムの過ごし方はさまざま。カフェ空間が人々にもたらす癒しや活力、その奥深さに魅力を感じながら、コーヒーへの探求心はなおも続く。