コーヒー大国として知られるグァテマラ。
グァテマラコーヒーは、香りとコクがしっかりとしていてインパクトがあり人気の高い銘柄です。
高品質で上品な味わいがあるゆえ、スペシャルティコーヒーの名だたる銘柄の中に名を連ねる存在でもあります。
珈琲感が強いことから、単品銘柄はもちろん他の豆とのブレンドにも活用され、世界中で幅広いニーズを獲得しています。
また栽培地によってさまざまな風味を見せるのも、グァテマラコーヒーならではの特徴のひとつ。
いろんな味わいを堪能できるので、産地や銘柄ごとに楽しみが増えますね。
今回はそんなバラエティのあるグァテマラコーヒーの風味や美味しい飲み方、栽培環境や歴史などをご紹介します。
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かつてウィーンで本場のカフェ文化に触れ、その後北部タイで薫り高いコーヒーを味わって以来、コーヒーに心魅かれる。その想いが募り、美味しいコーヒーを追求して2年間の東南アジア・東アジア放浪の旅へ。
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もくじ
グァテマラコーヒーとは
太平洋やカリブ海に面しているグァテマラ共和国産コーヒー
グァテマラはメキシコの南部に隣接する共和制の国家で、太平洋とカリブ海に挟まれた中央アメリカの北部に位置しています。
古代マヤ文明の遺跡が今なお残り、歴史と風格が感じられる街並みが有名。国土は北海道と四国を合わせた面積より少し大きめで、日本の約3分の1ほどです。
マヤ系先住民が国民の40%以上を占め、公用語のスペイン語以外にもマヤ系言語などが22言語もあるのが特徴的。
主要産業は農業で主にコーヒー、バナナ、砂糖などを栽培しています。
北緯14度~18度に位置するグァテマラは、コーヒーの主要生産国と同様にコーヒーベルトに属しており、マヤ系先住民の大半がコーヒー栽培に携わっています。
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コーヒー生産量が世界第10位のコーヒー大国
グァテマラ産コーヒーの生産量は2020年の最新値で225,000トン。
世界国別ランキングでは世界第10位に位置し、中央アメリカではホンジュラスに次ぐ生産量です。
2020年の人口は1,686万、日本のわずか3分の1ほどの国土でありながらも、トップレベルの生産国として君臨しているは、品質の良さと惹きつける美味しさがあるのでしょう。
それを証明するかのように、日本では2020年のコーヒー総輸入量391,611トン・輸入額1,133億円のうち、ブラジル、コロンビア、ベトナムに次ぐ第4位の26,771トン・105億円で全体の9.3%を占めています。
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火山灰性の土壌で良質なコーヒー豆が多い
グァテマラは日本と同じ火山国。成層火山・カルデラ火山・単成火山が合計75個も識別されているほど、火山の多い国です。
2018年にも火山噴火により多大な影響が出たグァテマラですが、コーヒー栽培において火山は必ずしも悪影響のあるものとは言えません。
火山から降り注ぐ火山灰は火山灰層になり、土壌にはたっぷりのミネラルが浸み込んでいきます。
この火山灰性の土壌はコーヒー栽培にとって最適な条件を持ち、肥沃な土壌を作り上げる大事な要素となります。
そんな好条件の環境にあるわけですから、優れたコーヒー豆が多く育つのも納得ですね。
コーヒーの品質を高めるグァテマラのANACAFE
グァテマラのコーヒーは、生産履歴をさかのぼることができるのをご存知でしょうか。
これは品質管理・生産管理が行き届いていることを示す指標のひとつとなりえるものですが、実はグァテマラ国立コーヒー生産者協会(ANACAFE)の存在によって実現しているのです。
ANACAFEは1969年に発足されたコーヒーに関する専門機関で、グァテマラのコーヒー産業に大きく貢献しています。
主にコーヒー豆の品質向上と品種改良などの研究、生産者への情報提供と指導。
そのほかにグァテマラコーヒーの輸出ライセンス発行、海外におけるグァテマラコーヒーのプロモーションなどの活動を行っています。
グァテマラコーヒーの特徴と味
ふわっと香る華やかなで花のような香り
グァテマラコーヒーは、口に含んだ時のふわっとした柔らかな甘みと花のような香りが特徴です。
この甘いフローラルフレーバーは余薫(よくん)として漂い、上品な心地良さが加わります。
力強いボディ感たっぷりのコクと酸味、そして香りがほどよく調和されています。
とはいえ、グァテマラコーヒーは栽培地によって多様な風味を持っていることも事実。
甘酸っぱいフルーティーなものやカカオのようなフレーバーなどもあり、産地ごとにそれぞれの楽しみ方ができるのです。
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甘みとコクのバランスが良い上品な風味
グァテマラコーヒーの風味の中で最も際立っているのは、果実感のある甘みと重厚感のあるコク。
グァテマラで生産されるコーヒー豆のおよそ95%はウォッシュド精製(水洗式)による精製のため、雑味のないすっきりとした酸味が引き立ちます。
リッチなコクに負けないほどの鮮やかな酸味があることでバランスが取れ、口当たりが良く飲みやすくなります。
▼グァテマラコーヒーの味わい
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グァテマラコーヒーの美味しい淹れ方と飲み方
グァテマラでは今でも1850年頃の農園が数多く存在する地域もあります。
コーヒーを飲む際、当時に思いを馳せながらグァテマラコーヒー産業の歴史と伝統を感じることができれば最高ですよね。
それだけでなく、産地によって風味に違いがあるため、それぞれの特性に合った淹れ方をするのがおすすめです。
より美味しく味わえるように、産地別の淹れ方をご紹介します。
浅煎り寄りならフルーツのようにフレッシュな風味に
フローラルな香りと軽い酸味が特徴的なアンティグア産コーヒーと、酸味のきいたフルーティーフレーバーのアティトラン産コーヒー。
これらの風味に対しては、浅煎り(ライトロースト・シナモンロースト)がおすすめです。
通常焙煎する際には、時間の長さに応じて豆本来の持つ酸味が減少していきます。浅煎りなら短時間で焙煎を行うため、酸味が損なわれることなくベストな状態で飲むことができますよ。
またアンティグア産でもカカオやナッツのような香りを持つものであれば、浅煎り~中浅煎り(ミディアムロースト)が適しています。
フレッシュな風味を維持しながらも、苦味が少し加わることで香ばしくまろやかで飲みやすいテイストに仕上がります。
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深煎り寄りなら甘みとコクや香りが際立つ
重厚なボディでリッチなコクが特徴的なウエウエテナンゴ産コーヒーにおすすめなのが、中深煎り(シティロースト)~深煎り(フルシティーロースト)。
やや深煎りの焙煎方法は、酸味が柔らかくなりまろやかな飲みやすさに変化します。
さらに甘みとコクが加わり香味も際立つため、ウエウエテナンゴ産にはピッタリです。
ストレートで味わうのも良いですが、深煎り寄りでローストするならカフェ・コン・レチェを試してみましょう。
カフェ・コン・レチェはグァテマラ式コーヒーで、スペイン植民地時代にスペインから伝わった飲み方です。
作り方は簡単で、濃い目に抽出したコーヒーとホットミルクを同等の割合で混ぜ、たっぷりの砂糖を入れるだけ。
ぜひ試してみて下さい!
グァテマラコーヒーの栽培環境
国土の約70%が火山に囲まれている山岳地帯
グァテマラでは国土のおよそ7割が山岳地帯で、標高3,000m級の山々が数多くあります。
タフムルコ山はグァテマラ西部のサン・マルコス県にある成層火山で標高は4,220m、中央アメリカで最も高い山です。
サカテペケス県にあるアグア山は3,760mで国内第4位、上位第4位までが日本の富士山より高い標高なのです。
実際にグァテマラコーヒーが栽培されている地域の標高は一般的に600m~1,500mで、フエフエテナンゴ地区は2,000m。
このように火山に囲まれた山岳地帯の中での栽培は、地形的にも高度な技術を要すると言えます。
昼夜の寒暖差がとても激しい栽培環境
グァテマラコーヒーの栽培地は険峻な山岳地帯。
ほとんどの地域で山の斜面にコーヒーノキが植えられコーヒー豆を栽培する農園が多く見られます。
首都のグァテマラシティーなどの平地部や海岸地域は低地で熱帯性気候のため、一日を通じて比較的暑いですが、山岳地帯では朝晩の冷え込みが激しくなります。
しかしこの昼と夜の激しい温度差は、コーヒーにとってとても良好な環境となります。
寒暖差はコーヒーノキにストレスを与え、実の引き締まったコーヒーチェリーの生育に役立つのです。
[関連]【専門家監修】コーヒーチェリーとは?真っ赤なコーヒーの実の構造や精製過程
シェードツリーを使った日陰栽培を行っている
日照量は良質なコーヒー豆を育てるための重要な栽培環境のひとつです。
とはいえ、コーヒーノキはとてもセンシティブで直射日光を長時間受けると、葉が茶色く変色し葉焼けや枯れてしまうことに。
栄養が十分に行き渡らず、豆の大きさや艶などにバラツキが出てしまうのです。
そんなコーヒーノキを守ってくれる大切な木がシェードツリーです。
シェードツリーは日陰樹や木陰樹とも呼ばれ、樹高の高い木々で、コーヒーノキの周りに植えられます。
そうすることで、大量の紫外線を遮り、成長を促してくれるのです。
[関連]【専門家監修】コーヒーの木の育て方と三大原種のアラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種
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グァテマラの主要産地は3つ
産地 | 特徴 |
---|---|
アンティグア | グァテマラの代表的な農園が多い |
アティトラン | 小規模農園が多く、品質はやや劣る |
ウエウエテナンゴ | 大規模な農園で重厚なボディのコーヒーが多い |
グァテマラにはいくつもの産地がありますが、中でも主要となる産地は3つ。
代表的なのがアンティグアです。活火山で有名なフエゴ山のそばに位置し、国の代表的な農園が多くあります。
品質の高い豆が栽培され、優雅なフローラルと軽い酸味の風味が特徴的で、中にはカカオやナッツのような香りも存在します。
アティトランはグァテマラで主流の小規模農園が多くある地域です。
品質は他の地域に比べるとやや劣りますが、果実感の強いフルーティーフレーバーが際立ち、酸味と相まってクリアな飲み心地です。
ウエウエテナンゴは有名な大規模農園があり、重厚なボディのコーヒー豆が多く生産されています。
リッチなコクの珈琲感が存在感を持たせます。
アラビカ種を基本にカトゥーラ種、カトゥアイ種、パカマラ種を栽培
グァテマラコーヒーはアラビカ種をメインに栽培されています。
カトゥーラ種は古くから存在するブルボン種の突然変異種で、ほどよい酸味と強い渋みのある風味を持ちます。
カトゥアイ種はブラジル生まれのハイブリッド種で、病害虫や霜・低温などへの耐性があり樹高の低い品種のため、栽培しやすい性質。
パカマラ種はエルサルバドルで誕生した人口交配種で、生産量が少なく希少性の高い品種とされています。
個性的な香りと優質な風味が特徴的です。
[関連]アラビカ種のコーヒー豆の特徴と品種について解説します。
[関連]エルサルバドルコーヒーの特徴や味わいと等級や歴史、美味しい淹れ方・飲み方を解説
グァテマラコーヒーの等級
略号 | 等級 | 標高 |
---|---|---|
SHB | ストリクトリーハードビーン | 1,350m~ |
HB | ハードビーン | 1,200~1,350m |
SH | セミハードビーン | 1,050~1,200m |
EPW | エクストラプライムウォッシュド | 900~1,050m |
PW | プライムウォッシュド | 750~900m |
EGW | エクストラグッドウォッシュド | 600~750m |
GW | グッドウォッシュド | ~600m |
グァテマラでは数多くの産地があり栽培環境によって特性が多様にあります。
栽培地ごとにコーヒー豆の特徴は異なるものの、共通しているのが優れた風味。
この風味を作り上げる環境が標高に影響されることから、グァテマラでは標高の高さを品質評価の基準値として定めています。
具体的には、標高を7つに区分し標高が高いほど高品質であると評価します。
最も高評価なのが1,350m以上のSHB(ストリクトリーハードビーン)です。
以降は150mごとに区切られていき、600m以下のGW(グッドウォッシュド)が最も低評価とされます。
[関連]コーヒー豆の等級(グレード)を生産国別に詳しく解説!
グァテマラコーヒーの歴史
1750年頃にイエズス会修道士によってコーヒーが持ち込まれる
グァテマラのコーヒー栽培のルーツは、イエズス会修道士によるものと言われています。
イエズス会はキリストの教派であるカトリックの男子修道士の団体で、当時布教のために世界中を渡り歩いていました。
そんな中、1750年頃イエズス会修道士がグァテマラに渡った際、国内にコーヒー苗を持ち込んだとされています。
1850年頃に政府主導で品質を高めてコーヒー産業が成長
グァテマラ国内で本格的にコーヒー栽培が始まったのは、その100年後の1850年頃です。
グァテマラの当時の輸出主要産業は天然染料。世界では化学染料に取って代わろうとする時代です。
グァテマラでもご多分にもれず影響がありました。業界では減産に入り、外貨獲得の手段をひとつ失ったとも言える状態でした。
これを機に、すでにコーヒー産業が確立されていたコスタリカを参考にして、コーヒー栽培へのシフトが始まります。
その後、経済の中心にコーヒー産業を置き政府主導で経済発展を試みました。
そしてコーヒーがグァテマラの総輸出量の9割を占めたのは1880年のことです。
[関連]コスタリカコーヒーの特徴や味わいと等級や歴史、美味しい淹れ方・飲み方を解説
1969年にANACAFEが設置され大きく盛り上がっていく
ANACAFEが設立したのは1969年のこと。
専門的な機関による研究・調査のほか、世界マーケットにおいて質の高いマーケティング・ブランディング・プロモーションを実行し、世界中でグァテマラコーヒーの品質の高さが広まっていきました。
同時にコーヒー産業はどんどん飛躍していきます。
そして現在においても、グァテマラコーヒーは世界中で広く飲まれるコーヒーであり、世界輸出シェアの上位国として君臨しています。
グァテマラコーヒーの保存方法
グァテマラコーヒーを最後まで美味しく楽しむなら、保存方法が重要です。
コーヒーは「酸素、高温、直射日光、湿気」に弱いデリケートな食品。
常温で保存する際は密閉容器に袋ごと入れ、高温多湿や直射日光を避けた暗所で保管しましょう。
また飲み切るのに時間がかかる場合は、1度に使用する分を小分けにして冷凍庫で保存しましょう。
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この記事を監修した人
DONABE-COFFEE 店主
独自の「土鍋焙煎」を確立すべく、2013年10月に沖縄県名護市にコーヒー豆屋をOPEN。自家農園でのコーヒー栽培にも着手し、少量ながら毎年収穫に成功している。2021年「COFFEE SYMPHONY~コーヒーの自給自足を目指す人へ~」(つむぎ書房)を出版。
この記事を書いた人
フリーライター
かつてウィーンで本場のカフェ文化に触れ、その後北部タイで薫り高いコーヒーを味わって以来、コーヒーに心魅かれる。その想いが募り、美味しいコーヒーを追求して2年間の東南アジア・東アジア放浪の旅へ。各国カフェタイムの過ごし方はさまざま。カフェ空間が人々にもたらす癒しや活力、その奥深さに魅力を感じながら、コーヒーへの探求心はなおも続く。